フリッツ・ハールマン

2014.10.06.Mon.11:40
1875年10月25日、フリッツ・ハールマンは6人兄弟の末子として生まれた。

彼ら兄弟は両親の不仲のためか、健全は育たなかったようで、次兄は幼女暴行で長く懲役し、3人の姉は全員が売春婦となった。
それでも母親は彼を甘やかし、女の子のように可愛がり、人形で遊ばせていた。父親は、なよなよしたフリッツを疎んじ、彼も飲んだくれの父親を憎んで育ったようだ。

16歳で陸軍学校へ入るが、癲癇気質があったため退学となる。この挫折はフリッツ少年の心的外傷となり、彼は生涯にわたり自分は精神障害者だという自覚に苦しめられる。

その後は職を転々とし、幼い子供にいたずらしたり、窃盗を繰り返して少年院に送られた。25歳で従軍し、28歳で除隊してからも泥棒や詐欺などで刑務所を出入りしている。

1918年、フリッツ(当時43歳)はハノーヴァーに戻り肉屋を開いた。彼の風貌は、小太りでちょび髭を生やした、まさしく人の良い肉屋の親父さんだった。愛想がよく、にこにこしながら店頭で肉を切るフリッツの姿は、じきに人々の目になじんだ。

一方、もうひとつの顔として警察の密偵をやっていた。肉屋をやるかたわらでちょっとした情報を集めて密告したり、警察の手先として働くなど、ある種の便利屋だった。

この副業は、フリッツにとっては仕事以上に有利で、警察も彼の微罪は大目に見るという暗黙の了解が成り立った。つまり、彼が幼児性同性愛者で、浮浪児の男児にちょっかいを出すくらいは大目に見てもらえた。

― 人肉の肉屋 ―
1918年12月23日、フリッツは12歳の美貌の浮浪児を拾い、家に連れ帰って4日間情交した。しかしその後、彼の寝室からその美少年の姿は消えている。だがその少年には実は母親がおり、彼女の嘆願で行方不明の捜査がはじまった。

やがて目撃者が見つかり、どうも肉屋のフリッツが少年を連れ帰ったらしいことが判明する。いつものことかと呆れながら、刑事は彼の家を訪れてノックもせずドアを開けると、フリッツは1人の少年と情交の真っ最中であったが、探している失踪少年ではなかった。フリッツは、現行犯では言いのがれができず、猥褻罪で9ヶ月の懲役で刑務所に収監される。

だが警察はこの時に重大なミスを犯してしまう。
あまりに呆気にとられたためかフリッツの自宅の捜索をろくにしなかったのだ。この時、行方不明の少年の生首が新聞に包まれて、ストーブの後ろに無造作に置いてあったのだ。

1919年9月、フリッツは出所し、再び新しい肉屋を開く。そしてその直後から、戦争で家をなくした浮浪少年たちが続々と姿を消しはじめた。

フリッツは警察のふりをして、行くあてもなく駅で寝泊りしている少年を叩き起こし、自分の好みに合うと「かわいそうに、飯を食わせてやる」「寝床を提供してやる」と言って家に連れ込むのである。ハノーヴァー駅周辺をうろついていた10歳~23歳の美少年たちが、哀れにもフリッツの毒牙にかかった。

1924年5月、ハノーヴァーの川から4つの頭蓋骨が引き上げられた。警察はついに重い腰をあげ、フリッツを容疑者として捜査することにした。

ひとりの絶世の美少年が囮として放たれた。案の定フリッツはこの男の子に手を出そうとした。そして、家に連れ込み強姦しようとしているところで警察が踏み込んだのだ。フリッツは猥褻罪で現行犯逮捕され、家宅捜索の結果、被害者の遺留品とおぼしき衣類を山ほど押収した。

また、川からは続々と骨片の詰まった袋が発見され、鑑定の結果、少なくとも23人分の骨であることが判明した。

― 灯台下暗し ―
これほどの犠牲者が出た背景には、フリッツが他の犯罪者をしばしば捜査官に引き渡していた、警察の情報提供者だったということが挙げられる。目と鼻の先にいるフリッツが、まさか連続殺人の犯人だとは警察も考えなかったのだ。
彼の裁判は見せ物のようになり、ドイツにおいて主要なマスコミが大々的に報じた。

1919年から1924年にかけて、裁判記録にある犠牲者数は28人だが、フリッツ自身は少なくとも48人は殺したと豪語していた。殺された死体は一体どのようにして処理されたのか。
これには恐ろしい噂がある。

フリッツが犠牲者の肉を闇市場で缶詰の豚肉として売り歩いたというのだ。これを裏付ける証拠は無いが、近所の女性がレストランを所有し、彼から肉を買っていたという事は事実である。

フリッツの逮捕後、彼の共犯者で同棲相手でもあったハンス・グランスが保管していた古着全てが押収され、全国の行方不明の家族達は、衣類を確認するためにハノーヴァーに向かわなければならなかった。

1924年12月19日、「狼男」「吸血鬼」と称されたフリッツは死刑判決を受ける。
1925年4月15日早朝にハノーヴァー地方裁判所の刑務所でギロチンによる斬首刑に処された。処刑後フリッツの頭部は脳の構造を調べるため、科学者らによって保存された。


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